新聞見たら一面に広島小1女児殺害事件 が出ていた。
京極夏彦の『魍魎の匣』を最近読んだばかりだったので、凶器のダンボール箱が、つい作品世界に展開される「匣」と読めてしまう。
閑話休題[ところで]
ファンには当たり前のことかもしれないが、京極堂シリーズは面白い。友達に薦められて此処数ヶ月読んでいる。僕はミステリィの類はあまり嗜んでいないのだけど、なぜか嵌[はま]った。なぜ嵌ったかということを考えてみるに、京極堂が犯罪そのものを書くことに成功しているからだと思う。その作品内で京極堂(≒作者の京極夏彦)は人が犯罪を起こす瞬間を「魔」が通ったという表現で説明する。
推理小説では、事件の技法や動機、条件など犯罪の「表層」がメインになることが多いけど、京極堂は犯罪そのものを主題の一つにしている、と思う。その意味では彼の作品は時々言われる批評の言どおり「ミステリィではない」。なるほどその言い方は間違ってはいない。ただしそのあとに僕はこう付け加えたい。「それ以上のものだ」と。彼は魔の訪れる瞬間(天使のお通りの逆みたいなもの)としての犯罪そのものを描くのに成功している稀有な作家の一人だ。
以前ユリイカで怪談の特集が組まれていたとき、彼は村崎百郎と対談していたけれど、それや一連の作品を読むかぎり、相当理知的、理性的だなという印象をもった。そして、世の怪[あや]しげなるものに対する無知な姿勢に何とかしたいと願っているように見える。オカルトの世界に属している(変な言い方だ、関わっているの方が正しいな、しかし水木先生の弟子だしやっぱり妖怪変化[へんげ]の一種かも)人で、その世界に対する啓蒙を行う人というのは珍しいんじゃないだろうか。こういう自覚的な責任感のある人が活躍するのは大層いいことだ。
参考:
京極堂の犯罪=「魔」という現象の説明は、鎌田東二の『魔境論』にもつながるし、犯罪を作り出すのは社会の側からの視線であるという論は、芹沢一也の一連の著作の論法と共通するものがある。
- 作者: 鎌田東二
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- 作者: 芹沢一也
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