Father’s Day

 ある会話。どこかで。


「たしかにおまえが何を御所望でしょうと聞いてきたときワインがいいと答えはしたが、

ポケット・ワイン・ブック 第6版 (ハヤカワ・ワインブック)

ポケット・ワイン・ブック 第6版 (ハヤカワ・ワインブック)

だとは思ってもなかったぞ。ありがたいが、老眼が始まりかけて、細かい文字が見づらい」
息子「そんなつれないことをおっしゃられては困りますね。以前からこれからぼくからの贈り物は全て本もしくはそれに準ずるものにしますと述べてきたではありませんか。泡立つ神の黄金水のほうがよかったとでも言うのですか」
「またお前は余計なことを。黙っておればヴィンテージもののくせに、ひとたび栓を開けばいっしょに大事なガスも抜けちまう」


「ところで母の日にはおまえからは何にもなかったねぇ」
息子「それはお母さん、あなたは御自分の価値がわかっていらっしゃらない。ぼくのあなたに対する気持ちはたかだかもので測れるようなものではないということはよく御存知のはずでしょう」
「ほんと気抜けね、あんたは。Splashがなければ甘ったるくて飲めたもんじゃない」


息子「Ya-Ya-、こいつは困ったもんです。生半可な期待をもたせた罪はやはり赤いアルコールの血そのもので贖わないといけないのかもしれません」