Daisukeyの日記

安井大輔の日記です。

書評

ナンセンスの論理と笑い

◇ナンセンスとは ナンセンスnonsenseの原義は、「無意味」でばかげたこと、たわごとという意味だが、文学や芸能でいうナンセンスは「無意味」ではない。現実世界の常識や規範にとらわれない現象を想像の中で築き、日常、経験することのない感覚の世界や現象…

淡々と描き出されるアル中患者の壮絶さと面白さ

失踪日記2 アル中病棟作者: 吾妻ひでお出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2013/10/06メディア: コミックこの商品を含むブログ (165件) を見る 毎日毎日ギャグを考え続けるストレスからアルコールに飲まれ、身も心も壊れた漫画家がたどりついた世界は…

山下清の絵とことば

山下清作品集作者: 山下清,山下浩,椹木野衣出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/08/23メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 23回この商品を含むブログ (5件) を見る かつて山下清という画家がいた。今から五〇年以上も前の日本を放浪して、歩いてのけ…

食をめぐる問題と思考

お腹が空く、だから食べる。食べるという行為は、あまりに当然であると思われる。がそれゆえにこそ、じっくり考えてみた人はあまりいないかもしれない。だが一歩振り返ってみれば食の世界は不思議に満ちている。生きるために他の動植物の命を奪うことはどう…

虎よ、虎よ!

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)作者: アルフレッド・ベスター,寺田克也,中田耕治出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/02/22メディア: 文庫購入: 21人 クリック: 197回この商品を含むブログ (195件) を見る ジョウント効果と呼ばれるテレポーテーシ…

日本の美

おもしろい日本の美 日本美術が共有するのは何よりも見る人の好奇心に訴える奇抜な発想と斬新な意匠である。その視角を楽しませ遊ばせるエンタテイメントの精神は、いわば「おもしろさ」を追及する心といえる。美術史研究家・辻惟雄は、『奇想の系譜』『奇想…

戦争なき世界への本気の考察

勇者ヴォグ・ランバ(1) (アフタヌーンKC)作者: 庄司創出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/01/23メディア: コミック購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (17件) を見る (アフタヌーンKC)" title="勇者ヴォグ・ランバ(2) (アフタヌーンKC)">勇者ヴ…

「ゾンビの突発的発生は必ず起こる!」らしいよ

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える作者: ダニエルドレズナー,谷口功一,山田高敬出版社/メーカー: 白水社発売日: 2012/10/24メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 455回この商品を含むブログ (26件) を見る ある日、突然死んだはず…

現代ロシア文学の前線

『戦争と平和』のトルストイ、『罪と罰』のドストエフスキー、『桜の園』のチェーホフ……多くの人に知られるロシア文学の傑作群。彼らののちロシア革命から百年、ソ連崩壊から二十年以上たつ現代、かの国の文学はどうなっているのか。ベストセラーの新訳『カ…

「食べること」からみるナチスと現代世界

食べることはよく考えることである。食の思想史家、藤原辰史の著作を読むたびにそんな思いに駆られる。農業と人々の生活の歴史を、建築から自動車や冷蔵庫、そして石炭や電気といった様々なエネルギーに至るあらゆる技術の発展と関連付けて研究してきた研究…

イギリスを楽しむ

(ロンドン五輪に合わせて『綴葉』の特集に書いたものです) 紳士の国、ロックの発祥地、サッカー王国、ガーデニングにメイド、イギリスの一般的イメージといえばこんなところだろうか。日本でもなじみ深いこれら以外にも、イギリスには長い歴史のなかで形成…

貧困をなくすことは可能だ!

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える作者: アビジット・V・バナジー,エステル・デュフロ,山形浩生出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2012/04/03メディア: 単行本購入: 20人 クリック: 943回この商品を含むブログを見る 本書はインドやア…

内田百輭の棚

ひたすら食べたものを記録していくこだわりの『御馳走帳』(中公文庫)にはまって以来、百輭先生は私の心の師匠の一人である。先生を真似て「世の中に人の来るこそうれしけれとはいふもののお前ではなし」と軒先に貼ったこともある。今思えば痛いだけの相当…

左翼にあらざればインテリにあらず、という空気の起源と変遷

革新幻想の戦後史作者: 竹内洋出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/10/22メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 116回この商品を含むブログ (39件) を見る タイトルは本書の帯の言葉から。第二次世界大戦後の日本はこの標語のような「左派でなければイ…

都市社会学の眺望

古くから都市は存在していたが、都市部で地縁や血縁を共有しない人々が共存するのが常態になったのは、人類の歴史からみれば比較的新しいことだ。 都市をめぐる研究は数多くあるが、今回は社会学における都市論を紹介しよう。都市社会学は都市を単なる建築物…

百年前の革命 メキシコと中国で

革命という言葉は、古代中国の易経に見え、天命が改まり王統が交替することを易姓革命といった。今日この語は、社会的・政治的意味での言葉の訳語として用いられる。 近代的な革命の概念、すなわち社会の全面的変革による突然の新しい歴史過程の展開という意…

旅行記は今

旅人は単なる移動者ではなく、言葉を宿した移動者だった。たとえば芭蕉は『奥の細道』(岩波文庫)にあるように、旅立ちに際して感興を即興的に詠むことで俳句という技芸の内実を旅の姿に近づけようとした。現代の旅人も、あるときは観光客、あるときはジャ…

悪いことはなぜいけないのか

麻薬の例にあるように、一般・具体的な善と悪の境界は歴史的・社会的に形成されてきたものであり、いつの時代にも共通する基準があるわけではない。とはいえ「なぜ人を殺してはいけないの?」と問われた時に、多くの人がもつであろうギョッとした感覚、理屈…

遊びを人類学する

「遊び」について書く、すなわち考えることは簡単なようで案外難しい。そもそも「遊び」の定義は可能なのか。一般に、楽しみ、娯楽、休養、リラックス、ストレス解消などの目的で生物がする行動の総称とされるが、「食べる」や「寝る」などと違って、その目…

舌の快楽

嗜好品の世界 原始時代の人間は自然から得られる資源に依存して暮らしていた。狩猟と採集と漁撈が不可欠な労働であり仕事であり、それらは趣味ではなかった。しかし約一万年前の農耕開始から、農業が最も重要な仕事となり、狩りや木の実集め、魚釣りが遊びと…

視覚を考える―イメージと文化の問題

西洋思想において視覚は聴覚と並び、対象が離れていても成立するため他の感覚よりも優れたものとされこれらに関わる作品こそが芸術とされてきました。このような視覚中心主義は、触覚などの身体的な感覚を失わせてきたと批判されることも多いのですが、そも…

シュルレアリスムの誕生と発展

未曾有の大破壊をもたらした第一次大戦の終結ともに始まった一九二〇年代、文学や芸術の世界では破滅した過去を断ち切りまったく新しいものを創りだそうという運動が始まる。その名はシュルレアリスム。戦時中に起こったダダに一つの起源を持つ、若者たちの…

都市を歩く

夏休みが近づきつつあるが、今年も多くの人々が様々な都市を闊歩するだろう。その時彼らは旅人としてその都市を歩くことになるのだが、しかしその様態と速度はもちろん多種多様である。例えば、パリ三泊四日パッケージツアーを考えてみると、それはごく限ら…

読書会をしよう、町へ出よう

大学に入ったのに、授業もクラスメートも退屈だ。サークルもバイトもイマイチ・・・。五月病と称されるこの状態。実は病気でもなんでもない、極めて正常な反応であって、本来大学は学生にとってはつまらないものだ。ただし、自ら欲するところのあるものに道は開…

ミクロコスモスとしての虫

私が考え信じているのは、すべてはカオスである。すなわち、土、空気、水、火、などこれらの全体はカオスである。この全体は次第に塊になっていった。ちょうど牛乳のなかからチーズの塊ができ、そこからうじ虫があらわれてくるように、このうじ虫のように出…