望外のこと

 ベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』の再版が出たので、以前大学生協の書評誌に紹介を書いていた。それを知った出版社の方が大変喜んでくれて、クッキーを送ってくださった。まったくもってありがたいことです。


【WEB版の書評】(最新版への更新はまだのようです)
  →http://www.s-coop.net/teiyo/


定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険2期4)

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険2期4)


[原稿を一部抜粋したもの]


 1983年に刊行され即ナショナリズム議論の古典扱いされるほど話題になったものの再版が本書である。インドネシア研究者であった著者は「国民」というのは社会的・政治的実体なのではなくて、近代以降に現われた概念であるにもかかわらず、原始以来の宗教共同体にも通じる「イメージとして心に描かれた何か」が凝集した「想像の共同体」ではないかとみた。ナショナリズムが形をもち拡大していくのには、出版資本主義が関与していたと指摘するのだ。
 そして国民という概念が当然となっていく過程を、起源を南北アメリカにもち、ヨーロッパでの公定化を経て、東南アジアで発展していく流れを、植民地の歴史をたどりながら、様々な観点から論証していく。官僚制度、言語、軍隊、地図、博物館、小説…私たちの身近にある様々なものが実は国民国家の装置としての起源をもつことに気づかされる。
 また今回の版で「旅と交通−『想像の共同体』の地伝について」という章が追加され、30カ国、27言語にいかに翻訳され出版されたかについて著者自らレポートしている。原書出版以来四半世紀に及ぶ本書のトランスナショナルな経歴が詳細にまとめられており、既読者にもお勧めできるようになっている。