一日は千円なので渋谷で

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を観てきた。会社に早く行って定時にあがる。いつもは朝ぐずぐずしているのに、こういう日はすぐ目が覚めるので不思議だ。いや、むしろ当然か。


 西部劇好きはもちろん、

 -むさくるしいひげ親父が好きな方

 -「昔は凄かったけど今は零落れている」的爺さんが一念発起、復活する話、たとえば「老海賊 最後の船出」とでもいうようなサブタイトルがつきそうなつかなさそうな話*1がお好みのお人。 ←ちなみに俺はこの傾向が強い

 -謎解きとか男女の駆け引きとかは実際のところどうでも良くて、そんなものより銃と爆発が俺は欲しいんだ! と思ってはいても子供っぽいと言われるのが怖くてつい強く出れない青年

 -何はともあれ男の美学、「おんなこどもにはわからねぇだろうがわかってくれともおもわなぇ」と肩肘張りたいけど明日も朝が早いから今日は寝ようというリーマン

 -スピードだ、映画にはCGなんかじゃなくて人があえて人と動物がおのおのの身体をはって作り出す加速する風こそが必要ではなかろうかとつねづね考えている御仁

 -栄枯盛衰、もののあわれ、たけきものも今は無きが如し、去り行くものの哀歓が足らないんじゃないかねぇ(怒)」と訳もなく怒ってる今日この頃な、少々くすぶり気味のそこのキミ

といった人々のうちのどれかが当てはまる、もしくは少しばかりかぶるものがあるといった方々には面白いんではないかなと存じ上げまする。
 んー、しかしどれでもない人のほうが圧倒的に多そうだ。
 マカロニ・ウェスタンの語源ではなくその語句自体どれだけの日本人が知っていることやら。夜7時半からのに行ったけど余裕で座れたしなぁ。しかしそういうペーソスこそがこの映画のみそでもあるのでしょうがない。
 時代は変わるんだ。でも人は早々変わらないし変われない。滑稽さと哀感かかえて転げまわるしかない。時流に上手く乗れないとか器用に立ち回ることが悪くないように言われることもあるけれど、変わらないのが自然なのであって本当はついてけない奴の方が正しいんだ。そんなことを思った。ああでも俺はそこそこ器用だからなぁ。ああはならない*2よ。絶対の貧乏も絶望も味わうことはあるまい。いやだなぁ。美しくない。たまらん。まったく。

 まあ、上のどれでもない人もぜひどうぞ。過去に傷を負ったじい様スタントマンが自らに始末をつけるためにかっこよくもやっぱりもの悲しくふんばる話です。
 ハリウッド*3が嫌いな人もご満足できるかと思います。ご安心ください。簡単なお涙頂戴ものなんかじゃないですから、ええ。そんなもの俺が紹介するわけ無いだろ。

*1:勿論その元祖はキホーテ老人の遍歴だということを思い出してもらいたい。

*2:「なれない」ではないことに読者は筆者の真意を読み取らなければならない。

*3:すぐアンチハリウッドを標榜する奴は少し単純に過ぎるきらいがあるようだ。統計を取ったわけではないので感傷でしかないのだけど、たぶんその人の中でハリウッド映画はものすごく狭い範囲のものでしかない。エロスとタナトスとを主軸にした「ハリウッド的物語群」は安易ではあるかもしれないが、これほど普遍的なstoriesは他にあまりないと思われる。その世界を制したスタイルは決して浅薄なだけのものではなく、人間の感情に訴える方法においてトコトン考え尽くされたきわめて精緻なシステムの上に成り立っているものでもあるということを認める必要がある。批判するなら好き嫌いからだけでなく「なぜ好まないのか」を考察する義務があると思うんだが。