荒野の思考

《基本思想》




★生きている人間はみなクズである。死んだ人間だけが偉大の名をもって呼ぶにふさわしい。


★なお死者には紙およびスクリーンに焼き付けられた人間をも含む。


★人界の全ての事象に付与可能な形容は「馬鹿馬鹿しい」の一語のみである。


★結局理解できるものしか愛そうとはしないし愛せない。


★沈黙は雄弁である。


★書くことによってしか救済はなされえない。しかしそれもまた仮初の救済にすぎない。


自己憐憫は恥である。


★理解不能の対象に向けて想像の動的視座を確保し続けるためにこそ頭脳は存在する。


★有意義な友人とは空腹を満たすための栄養源ではあるが、薬効のあやしい偽薬でもある。


★他人に相談する時点で既に殆どの問いに解は示されている。


★肩書きから語り始める人間は己の立場以上の展開を広げ得ない。


★あらゆる組織は腐敗する。


★自他の差異を問わず誠意と謝意は時に円換算されるべきものである。


★真のユーモアはペーソスとともにある。


★生同様に希望もまた苦い。


★他者は己に関心もなければ興味を示す義務も一切無いことを肝に命ずるべきである。


★表現とは基本的にいやらしくみっともないものである。


★全ての善は悪にも成り得る。全ての悪は偽善にも成り得る。どちらも容易に。そして元のものよりもより激しく。


★偽善も視点を変えればはるかに優れた善と言える。


★体内に神が宿るとするのならば、機械の中に神が隠れているとしても何らおかしなことは無い。


★死は慰めである。場合によっては当人ならず他人にとっても。